録音時期による音源の「質」
今回はファーストチョイス向けの音源について考えてみます。
世に出回る音源であれこれと評判がつきまとうのは大抵が既にこの世を去った過去の巨匠たちのものです。フルトヴェングラー、ベーム、ムラヴィンスキー、バーンスタイン、カラヤンなどなど…例を上げればキリがありません。彼らは素晴らしい録音を残しました。
しかし、始めに手に取るべき音源かという点では注意も必要かなと思うのです。
あれこれ口で説明するよりも聴く方が手っ取り早いと思うので3つの音源を用意してみました。
全て同じ曲の同じ箇所、ついでに同じ楽団で統一。
1949年 フルトヴェングラー指揮 ベルリン・フィル
1957年 カラヤン指揮 ベルリン・フィル
2012年 メータ指揮 ベルリン・フィル
前2つの音源はパブリックドメイン音源より拝借しました。
2012年のものが圧倒的なのは当然として、1949年と1957年でもかなりの差が有るのが分かると思います。これでも録音状態が良い方で、ソ連などの同時代の音源は更に劣悪になります。
作曲家の生きた時代がそれぞれ有るように(コラム第6回参照)指揮者が生きた時代も様々で、大指揮者と言えども新時代のテクノロジーには敵わないと言った所でしょうか。
ちなみに今回取り上げた指揮者だとこんな感じ。
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954)
ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908-1989)
ズービン・メータ(1936-)
改めて今回のテーマの「ファーストチョイス向けの音源」の話を。
私自身は過去の巨匠達の音源は大好きです。
ただ、これは曲を既に知っている人向けだと思うのです。
ノイズが乗っていたり、音が潰れていたりする様な音質では音楽に集中できないのではないでしょうか。2つ目のカラヤンの音質くらいなら大丈夫かもしれませんが、これくらいの時代だと音質にかなりの当たり外れが生じてきます。CDを買う前にこれを判断しろというのは無理な話でしょう。
結論から言うと、音質に関しては70年代頃から総じて安定し始めてくる印象です。80年代にもなるとCDが出て来る影響か更に安定します。逆にそれ以降はほぼ頭打ちという感じがします。60年代にも鮮明な録音は有りますが、先述したように当たり外れが大きいです。
録音年の情報は大抵のクラシックCDには楽団名や指揮者名と共に記載が有るので、複数の選択肢で悩んだら古い音源は一旦選択肢から外すのが良いでしょう。
次回は今回の続きで、CDパッケージから読み取れるもう一つの情報などについて書いていこうと思います。
録音状態の比較という事で並べた音源ですが、音楽的な正確もそれぞれで聴き比べとしても面白い感じ。メータはテンポ設定はカラヤン寄りですが、リズムの扱いはフルトヴェングラーに近い物を感じます。