どようのつちのひクラシック音楽

どようのつちのひ 18

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「ステマネに見る演奏会の流れ」後編

前編では演奏会が開場する前までの流れを見てきました。
今回は演奏会本番の流れを紹介すると言う事で、実際にそれっぽい曲目を並べてみました。

・グリンカ 歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
・チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番
・チャイコフスキー 交響曲第5番
開場13:00 開演13:30

こんなんどうでしょう。オールロシアプログラム。

フィクションですが、かなりベタな選曲なので同じ曲目の演奏会は探せばきっと見つかると思います。

<13:00>開場
舞台を最初の曲の編成にセッティングしたら、客入りの状況を見て定刻通り開演するかの判断を下します。入場の混雑、雨天時の傘立て周りやトイレ待ちの行列で数分押す事はよくある事です。時には奏者の楽器のトラブルとかも…。

<13:25>1ベル(5分前ベル)
大抵の劇場では5分前にベルを鳴らします。そのまま5分前ベルと言ったり1ベルと言ったりします。要するに「もうすぐ始まりますよ」の合図。劇場の案内放送なども流れたりします。この頃には奏者も舞台袖にスタンバイしています。

<13:30>2ベル(本ベル)、開演
今回は特にトラブルも無く定刻になりました。開演直前にもベルを鳴らします。ベルが鳴り終わると薄暗かった舞台に照明が灯ります。いよいよ団員入場です。

<13:31>団員入場、チューニング、指揮者入場
まずはコンサートマスター(以後コンマス)以外の団員が入場します。その後コンマスが単独で入場し、お辞儀をします。その後オーボエがA(ラ)の音を出しチューニングが始まります。チューニングが終わり次第指揮者が入場、演奏が始まります。入場の指示も全てステマネが出しています。
ちなみに、指揮者を舞台に送り出したらステマネも拍手をします。実は客席の誰よりも先に拍手をしているかもしれません。拍手の合図出しの意味も少しあります。

さらに余談ですが、A音の国際基準音は440Hzですが、日本のオーケストラの大半が442Hzを採用しています。

<13:32>演奏開始

グリンカ 歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲

まずは短く華やかな序曲で場を暖めます。

<13:37>演奏終了~舞台転換
次の曲がピアノ協奏曲なので、舞台の中央にピアノが必要になってきます。その為に舞台転換を行います。舞台照明を暗くし、奏者には一旦退場してもらいます。その後、弦楽器の椅子や指揮台を避けて動線を確保したら、舞台の隅に置いていたピアノを舞台中央へと運搬、弦楽器の椅子を協奏曲の配置に並べます。もちろんピアノの位置も奏者の椅子の位置も予め「バミって」ありますよ。
転換が完了したら団員に再入場してもらいます。ここからはコンマスも一緒に入場です。

<13:40>チューニング~演奏

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番

普段はオーボエから音を貰うチューニングですが、ピアノ協奏曲の場合だけ特殊でコンマスがピアノに近寄り、ピアノで基準のA音を鳴らし、その音にオーボエが音程を合わせてから普段通りのチューニングを行います。理由は単純にピアノをその場でチューニングするのが至難の業だからです。
この鍵盤を押す作業、簡単では有るのですが、コンマスにとっては普段あまり触れない楽器なので意外と緊張するらしいです。「間違えて違う音押したらどうしよう」とか。
チューニングが済んだら、ソリストと指揮者の入場です。

<14:15>カーテンコール、花束贈呈、ソリストアンコール
花束を受け取ったソリストは、何度かのカーテンコールを経て再びピアノに向かいます。どうやらアンコールを弾いてくれる様です。

チャイコフスキー 6つの小品より「感傷的なワルツ」

ソリストがアンコールで弾く曲は完全にソリストの好みです。あまり長い曲を弾かれてもスケジュール的に困るので、軽くは打ち合わせますが。プログラムの趣旨に関係なく自分の得意曲を弾く人、プログラムに合わせてロシアものを弾く人、その中でもちょっとモダンにソ連時代の作曲家を…など様々です。
今回はチャイコフスキーの曲を弾いてくれました。

<14:22>15分休憩
演奏会の折り返しにはトイレのための休憩が有ります。通常のコンサートだと15分か20分休憩が一般的です。また、ホールによっては軽食を提供するスペースも有ります。この間にステマネは次の曲の配置に舞台転換を行います。
この休憩でも休憩終了の5分前にベルを鳴らします。

<14:37>団員入場~演奏
前半と同じ流れなので入場は省略して演奏へ。

チャイコフスキー 交響曲第5番

<15:27>演奏終了、カーテンコール
こちらも基本的に前半と同じ流れです。最後に指揮者に花束を渡して終演です。コンマスに花束を渡す事も有ります。

<15:29>アンコール

チャイコフスキー エフゲニー・オネーギンより「ポロネーズ」

大抵、楽団のアンコールの有り無しは予め決まっています。
アンコールの有り無しはプログラムや楽団次第なので、説明するのが複雑です。

大雑把に分類すると…
・後半曲が超大曲や暗く終わる曲:アンコールなし
・アマチュアオケ:アンコールあり
・プロオケのツアー:アンコールあり
・地元プロオケの定期プログラム:アンコールなし
こんな感じでしょうか。演奏会に慣れてくるとアンコールの有り無しは何となく見当がつくようになります。「チャイ5ならアンコールあるかもしれないけど、チャイ6だと無さそうだなあ」とか。

曲目は大抵メインの曲と同じ作曲家です。オケならではの固有のレパートリーを持っているのであればそういう曲かもしれません。また、最後に演奏した曲の盛り上がる部分(普通は終盤)を抜粋して演奏する事も。そもそもはアンコールって後者の意味なんですけどね。

<15:35>終演
特にトラブル無く演奏会が終了しました。
お客さんが客席から居なくなったのを確認して、舞台のバラしを行います。
今回は劇場の使用契約は16:30までなので、55分で撤収しなければなりません。
この程度の編成で有れば3,40分で撤収出来ます。合唱台を組むなど、大規模な演奏会だとちょっと厳しいかもしれません。そういう時はちゃんと夜まで劇場を借ります。
楽屋も綺麗にして、打楽器なども運搬車両に乗せて保管場所まで返します。

<16:15>撤退
楽器の運搬中のはずなので完全な終了では無いですが、劇場とはお別れ。
おつかれさまでした。


ステマネに焦点を当てた話だったので少しごちゃごちゃしてしまいましたが、足を運んだ事が無い方にも演奏会の実際の流れが分かって頂けたかと思います。
普通の演奏会なら休憩時間も込みで大体2時間半前後です。ちゃんと間にトイレにも行けるし、ドレスコードも普通は無いので気軽に足を運んでみては如何でしょうか。ライブの臨場感も良いものですよ。

来週は延長戦として演奏会中のトラブルのお話をする予定。